助成金を不正受給するとどうなるの?

助成金不正受給に関する公表・罰則・逮捕等の特集

助成金の不正受給は、不正受給の事実を公表され、脅迫・収賄罪法・詐欺罪等での刑事告発されるなど会社にとって多くの損失を生み出します。

また罰則があり、不正受給したお金は全額返金、その後3年間は他の助成金を受け取ることができなくなったり、逮捕されてしまうこともあります。

このページでは助成金を不正受給した場合に、会社がどうなってしまうのか。
罰則や負わなければならない刑事責任等を詳しく説明します。

助成金を不正受給したらどうなる?

不正受給をした場合の罰則について説明します。

受けるペナルティは大きく分けると、3つです。

1,行政上のペナルティ
⇒助成金の支給停止
⇒事業所名の公表
⇒支給取消し後、3年の助成金申請不可

2,民事上のペナルティ
⇒助成金の全額返還

3,刑事上のペナルティ
⇒刑事告発(逮捕)

いずれも、不正受給をした経緯や金額等によって受ける罰則に差があります。
以下に罰則の詳しい内容を説明します。

1,不正受給を行った事業所名の公表

不正受給と判断された場合は、事業所名等の会社情報が一般公表されます。

公表されることによって、消費者・金融機関・取引先等からの信用を失うことになります。

各都道府県の労働局ホームページで情報公表され、公表される内容は以下。

事業主名称/代表者氏名/事業所名/事業所所在地/事業所概要/不正受給の概要 等
※左図は大阪労働局の助成金不正受給事業の情報公表内容です。

公表する都道府県の労働局によって内容は多少異なりますが、どの会社がいつ、どのような助成金を不正受給したのかがわかるようになっています。

公表方法は各都道府県労働局ホームページにて行われますが、各種メディアのニュースとして拡散され世間に晒される可能性があります。

2,支給された助成金は全額返還

不正受給が判明した場合、支給の取り消しや不支給になります。
また、既に助成金が支払い済みの場合は、全額返還が必要になり、返済方法は一括や分割払い等、その状況に応じて相談することが可能です。

3,不正受給から以後3年間の助成金は支給停止

不正行為が特に悪質なもの※1については、すべての雇用関係助成金が以後3年間の支給停止となります。

※1実態と異なる書類を作成して提出することは「悪質」とみなされます。

4,労働局からの刑事告発

特に悪質な場合には、脅迫・収賄罪法・詐欺罪等で、労働局から刑事告発があります。

※刑事告発は返還をしっかりと行う、分割でも良いので誠意をもって返還をしているなどの場合には免除される場合があります。

5,国の調査対象

役所を調査する機関である会計検査院から調査を受ける場合があります。
その他の不正受給などがないかを確認する為に、調査があります。

助成金の不正受給防止のための調査って??

助成金受給を申請するにあたって、調査を受ける場合があります。

調査は助成金が適切に使われるかどうかを確認するものです。

調査の内容は支給を受ける助成金によって異なりますが、中小企業緊急雇用安定助成金・雇用調整助成金については以下のような実施調査が行われます。

・従業員へのヒアリング
・賃金台帳や出勤簿の書類確認
・抜き打ち訪問

その他、調査の為に訓練日誌と出勤簿の照らし合わせや給料規定や制度適用状況等、様々な書類から矛盾がないかの確認を行います。
※参考資料:東京労働局より

■ワンポイント■
近年、不正受給が増えているので、書類などのチェックは厳しくなっています。

助成金の申請時や審査時だけではなく、支給後にもチェックが入る場合もあり、助成金の申請とは直接的に関係のないような内容もチェックされる事もあります。

なぜなら、助成金を支給する前提として正しい労働管理や帳簿の運用ができてることが重要になるからです。

確認される項目の例
・雇用保険加入の事業主であるかの確認
・休業手当などの支払い状況の確認
・出勤簿・賃金台帳等の裏付けとなる関係書類の確認
・労働保険、社会保険の加入の有無
・支給賃金の確認(最低賃金時間額を下回っていないか)
・時間外手当の支払状況(支払われているか)
・年次有給休暇の付与日数 など

判例 ~実際に起きた助成金不正受給のニュース~

実際に起きた助成金不正受給のニュースを紹介します。

【1】東大阪市 「介護報酬」不正受給

送迎について虚偽の報告を行い、助成金・補助金を不正受給

公共交通機関を使ったとして、虚偽の記録を作成していたが、事実は必要な許可を得ずに高齢者や知的障害者を車で送迎。

通院介助の回数を改ざんする等をして助成金・補助金を受け取った。
処分は介護保険の指定の取り消し。

【2】兵庫県 「キャリアアップ助成金」不正受給

非正規労働者の待遇を改善したと偽り、キャリアアップ助成金を不正受給

実際は、雇用していない人の名前で申請書を作成して不正を行った。
助成金は全額返金、兵庫労働局は詐欺の疑いで刑事告訴をした。

【3】青森県 「特定求職者雇用開発助成金」不正受給

精神障害のある男性を雇用していると見せかけて、実際はしておらず虚偽内容の申請書類を提出し、不正受給をしていた。

被害金額は約60万円。

【4】静岡県 「中小企業緊急雇用安定助成金」不正受給

県内の5つの会社が不正受給をしていることを公表。

不正内容は各社それぞれだが、いずれも1年弱から3年間ほど、出勤簿の偽造等を行い、休業していない従業員を休んだように見せかけ、助成金を不正受給していた。

全額で1億1200万円の不正受給。
5社ともに不正受給した金額返還する処分が決定している。

どの会社も社名等が公表され、2013年までに同時に不正受給が発表された金額の中で過去最大と話題になった。

不正受給なぜバレる?

助成金不正受給がバレる原因は以下。

・労働局の審査官や監査官はエリートがほとんどで安易な書類不正はすぐに見抜ける
・従業員にヒアリングをして暴露してしまう
・抜き打ちで審査官や監査官の調査がある
・内部告発(通報)が簡単にできるようになっている

それぞれ詳しく説明します。

■労働局の審査官や監査官はエリート

助成金の申請は、基本的に各都道府県の労働局に行います。

各労働局では、助成金の申請に提出された書類は基本的に「怪しい。」「矛盾がある。」という目で書類確認をします。

また、労働局で働いているほとんどの人が「国家公務員」つまりエリートです。

簡単な試験で国家公務員にはなれません。

学力の高い、専門知識を持った人が書類に不備が有るという目で確認しているわけですから、不正をしていれば簡単にバレてしまいます。

しかも、不正受給は年々増えています。

雇用安定の為の雇用調整助成金の悪用は2013年~2015年の3年間で約54億3千万円の被害総額で、不正発覚後は助成金の返還を求める仕組みになっていますが、約4割の助成金(23億8500万円)が返還されていません。

不正が増えているという危機感を持って仕事をしているのですから、不正防止や返還請求の強化が近年厳しくなっています。

労働局の助成金の審査官や監査官は、助成金不正受給のニュースに取り上げられるような事例や中小規模の少額の不正受給まで、今までに例があったものは簡単に見抜いてしまいます。

どこをどう調べれば矛盾点があるのかというのは、よく知っていますから、相手を甘く見ていると不正はバレます。

■従業員が暴露/抜き打ち調査

従業員に労働局の審査官や監査官が抜き打ち調査(ヒアリング)する場合があります。

例えば、キャリアアップ助成金の正社員コース※1の申請を行う場合に、もともと正社員で雇用した人を「当初は有期契約社員だった」 と偽って支給申請します。

申請書には、「雇用が約束さ れていたか」の確認項目があり、そこに従業員(労働者)の署名や捺印を貰うようになっていますが、
これも従業員(労働者)に会社側から「正社員ではなかったということにして署名・捺印をしてくれ」と頼み、署名捺印をしてもらいます。

しかし、従業員(労働者)は、労働局の審査官等に直接話を聞かれてしまうと、自分が犯罪者になるのを恐れ、「頼まれた」と暴露してしまうので、不正発覚につながります。

また、従業員(労働者)が暴露しなくても、実際に審査官等が抜き打ちで現地調査をすることもあり、職業訓練を受けているはずの対象者が、仕事をしている等の不正を見られてしまうこともあります。

※1
キャリアアップ助成金とは。
有期契約労働者・短時間労働者・派遣労働者などの所謂、非正規雇用労働者の企業内でのキャリアアップ等を促進するため、正社員化・処遇改善の取組を実施した事業主に対して助成する制度です。

■内部告発(通報)が簡単にできるようになっている

助成金を不正受給している会社を従業員が匿名で安心して告発することができるようにと、内部告発用のメールアドレスがあります。

各都道府県の労働局に直接届くので、受け取った労働局は調査を行い、不正受給を知ることができます。

メールアドレスは各都道府県の労働局ホームページに記載され、誰でもメールを簡単に送ることができるようになっていますから、内部告発を防ぐのは難しいと言えます。

もちろん、内部告発を行った人が誰であるかなどの個人情報は一切明かされないので、誰がいつ労働局に告発をしたのかなどを知ることもできません。

また、電話で直接監査官に不正を伝えることもできるように窓口が広くなっているので、誰かしらに不正受給の事実は報告されてしまう可能性があるということになります。

■ワンポイント■
~内部告発(通報)を考えている方け情報~

「内部告発をするのはいいけど、私も逮捕されちゃうの?」
「私も何か処罰の対象になるの?」

このような不安を抱えて、内部告発(通報)をできない従業員も多くいます。

助成金の受給手続きに必要になる資料集めや申請書作成等は、総務や経理の従業員が行いますから、その時点で不正受給などに気が付くケースもあります。

気がついたらスグに言えばいいと思いますが、なかなか会社との間に挟まれ内部告発もしにくい立場にもなると思いますが、従業員(平社員)までもが逮捕されることは、ほとんどありません。

助成金不正受給にかなり肩入れをして悪意を持って申請書を作成した等になれば、話は別ですが、
上司に指示をされ、上下関係に逆らえない・不利な扱いをされるのが嫌でやったなどであれば一担当者が逮捕されるようなことはないので安心して大丈夫です。

不正受給をしていたかも!?気がついたらどうするべきか。対処方法

もし、故意にではなく利用している助成金の扱いを間違えてしまった場合には、必ず労働局へ自社(自分)から申し出るようにしましょう。

「騙そう」等の悪意を持って助成金を不正受給した場合には、刑事告発等の処分がありますが、自分から間違えてしまった事実を申し出ることによって、多く受給してしまった助成金を返還するだけで済みます。

”不正受給”ではなく”間違い(ミス)”であれば、事業所名等を公開されることもないので社会的信用も失うことなく会社を経営していくことができます。

誰しも間違いはあるものですから、気がついた時点でお詫びの言葉と一緒に誠実に申し出ることが重要です。

また、支給申請に当たっては、各都道府県労働局雇用均等室で相談することができます。

間違えを起こす前に、専門相談員の詳しい支給手続きや必要書類等についてを聞いてみてください。相談料は無料ですから、得体のしれないコンサルタント会社より、信頼を置くこともできます。

まとめ

助成金を使って詐欺や違法行為、不正受給を行った場合は以下のようになります。

1,不正受給を行った事業所名の公開
2,支給された助成金は全額返還
3,不正受給から以後3年間の助成金は支給停止
4,刑事告発
5,国の調査対象

返還(返済)に関しては、不正受給をした助成金全額を返還する義務があります。一括での返還が厳しい場合には分割でも受付してくれます。

また、刑事告発は分割でもいいので返還の意思がみられる・返還を行っている場合には免除される場合もあります。

助成金の不正受給は「見つからなければいい」「見つかっても返せばいい」なんて考えてはいけません。

不正受給を行った事実は公表され、多くの企業に伝わってしまいます。

今まで付き合いのあった会社からも見放されてしまう可能性もありますし、個人を相手にしている業種であれば、お客様からも信じてもらえなくなり、今後の会社存続も危うくなります。

助成金の財源は雇用保険の一部で、みんなのものです。大切に利用して不正受給は絶対にしないようにしましょう。